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聖霊降臨節第16主日礼拝 説教要約
日本基督教団 茅ケ崎堤伝道所
2024年9月1日
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聖書 マタイによる福音書 10章28~31節
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28 体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。
むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。
29 二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、
その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。
30 あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。
31 だから、恐れるな。
あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。
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説教「人々を恐れるな」 要約
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① マタイが記したイエス様の言葉
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今月のテーマは「あなたに向けられた言葉」です。マタイ福音者が書かれた1世紀末、キリスト者は迫害にさらされていました。マタイは迫害に怯える人々を心配するあまり、イエス様も弟子たちを送り出す時、弟子たちが迫害にあうことを心配しつつ送り出されたと、あえて迫害を予告された記事の後にこの教えを記したのでしょう。イエス様は弟子たちに、「人々を恐れてはならない」(26節)と伝えます。そして、今はまだ私の教えは知られていないがいずれ知られることになる、だから、人々の前で堂々と伝えなさいと伝えて励まします。28節に「魂」が出てきます。これはもともと「息」という意味の言葉です。人間は神様から息を与えられて生き、死ぬ時は息が神様のもとに戻ると信じられていました。ですから、どんなに強い人であっても、たとえ相手の身体を殺すことができても、息を殺すことはできません。この「息」がここでは「魂」と表現されています。28節に「地獄」という言葉が出てきますが、ここで伝えたいことは、神様の力はそれだけ大きいという意味です。
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② イエス様、弟子たちを派遣する
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イエス様は神様の事を沢山の人に伝えたいと思いました。そこで、弟子たちの中から12人を選んで、色々な所に送り出すことにしました。でも、行った先には、イエス様の事を誤解している人たちもいるでしょう。弟子たちを脅かして恐ろしい目にあわす人もいるかも知れません。心配したイエス様は、12人の弟子たちにこう伝えました。「人々を恐れてはならない」。わたしが教えた神様の教えを人々の前で堂々と語りなさい。どんなに脅かされても、ひどい目にあっても、人々を恐れてはいけません。どんなに強い人でも、神様から戴いた「命」を奪ってしまう事はできません。更にイエス様は、昔の人たちが信じていた地獄をたとえに出して、神様はどんな事でもお出来になりますと言いました。そして、あなた方のことを大切にしておられる神様は、あなた方を必ず守って下さいますと弟子たちに教えました。イエス様のこの教えは、何十年もたってマタイによる福音書に書かれました。その頃、教会の人たちは、イエス様の教えを嫌がる人たちから苦しめられていました。
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③ 人々を恐れるな |
今朝のこの箇所の小見出しは、「恐るべき者」となっていますが、ここでのメッセージは28節、31節に出てくる人間を「恐れるな」です。イエス様が派遣する弟子たちを心配して伝えたこの「人々を恐れるな」という言葉は、マタイによる福音書が書かれた当時、人々からの迫害を恐れ、脅える人の心にしっかり刻まれたことでしょう。もちろん迫害は恐ろしいことです。集団で迫る迫害は人を脅えさせ、その心を殺そうとします。マタイが伝えるイエス様の言葉は、人々を恐れるな、恐れたいのならばもっと恐ろしい者、神様を恐れよと伝えます。しかし、ここでのメッセージは、「神を恐れよ」「恐るべき者を恐れよ」ではなく「人々を恐れるな」です。恐れも脅えも人の心を縛り付けてしまいます。今、この世界では、残念ながら、人を恐れさせ、その「命」をも奪おうとするいじめや虐待、差別が繰り返されています。迫害も後を絶ちません。そして、その究極は戦争でしょう。しかし、たとえどんな強い力でも、恐ろしい兵器であっても、神様が愛してくださる「命」を人は殺すことができません。「体は殺しても、魂を殺すことができない者どもを恐れるな」と語るイエス様の言葉は、私たちの日常を支えると共に、隣人を大切にする心、平和を愛する心を育むことでしょう!
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