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聖霊降臨節第8主日礼拝 説教「からし種」
日本基督教団 茅ケ崎堤伝道所
2023年7月16日
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聖書 マルコによる福音書 第4章30~34節
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「からし種」 要約
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① 小さなもののたとえ話 |
今朝の箇所は、種に関するたとえ話です。ここにある「からし種」は直径1~2ミリの小さな種で、明らかに小さなもののたとえです。この植物は成長すると高さが3~4メートルになると言われています。このたとえ話は神の国が初めは小さな現実であっても、やがて信じられないほど大きなものになる、ということを表しています。当時の人々にとって天の国(神の国)というメッセージは、神が王となり、ローマ帝国の支配から自分たちを解放してくれるというようなメッセージに聞こえました。そういう政治的・軍事的な勝利を期待していた人々から見れば、イエス様の周りに集まった人々の集団はみすぼらしく、神の国からはほど遠いと感じられたでしょう。しかしイエス様は、この小さな現実の中に神の国の確かな芽生えを見ているのです。神の国の成長は人間の力で実現するものではありません。イエス様は、人間的な目で見れば「小さく取るに足りない現実」を「神の国の芽生え」と見て、成長させて下さる神への信頼を求めているのです。 |
② イエス様のたとえ話
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イエス様のたとえ話は、私たちが目の前の現実を見る見方を変えます。自然災害や大事故の前では人間の無力さを感じます。戦争やテロの現実の前では、平和を願う祈りはあまりにも弱々しく感じられます。人と人との関係を引き裂いて行く大きな力や不気味な暴力の前では、それでも愛し続けようという私たちの努力がむなしく感じられてしまうかもしれません。でも、その善意と努力を「からし種」と見た時に、この現実も決して捨てたものではない、と受け止めることができるのではないでしょうか。マザー・テレサは「私たちは、大きなことはできません。小さなことを大きな愛をもって行うだけです」という言葉を残しています。カードに書き添えられた小さな手書きの文字を見て、この美容室、また行こうかなと思う人たちがいます。同じように、教会から届いたクリスマスカードやお誕生日カード一言のはがきやお手紙によって足をもう一度、教会に向けて下さる方がいらっしゃいます。そんな積み重ねが大きな変革に繋がっていくのです。 |
③ からし種 |
イスラエルの当時の種まきは、畝を作って蒔くのではなく、ばらまくという非効率的なやり方でした。それは、「種を蒔く人は、神の言葉を蒔くのである」(14節)と関連させると、神様の言葉はすべての人に与えられているということを言うための最も良い例だと思います。神様の言葉、神様の愛、神様の導きはすべての人に与えられているのですが、それと気が付いて良い結果を導き出す人は少ないことを「からし種」と表しています。それでも、人は神様の一方的な愛と、イエス様の十字架の贖いで救われるということを言いたいのではないでしょうか。聖書に、「大切なのは、植える者でも水を注ぐ者でもなく、成長させて下さる神です」(1コリント3:7)という言葉があります。私たちがそれぞれ与えられた能力を精一杯用いる時、または、小さなことでも、心をこめて行う時に、周りの人たちや神様には喜びがあります。けれど、種は、種を蒔いた人の思ったような時でなく、種のタイミングで芽が出てきます。そして、神様は不思議なタイミングで、私たちも、私たちの能力も、人の努力や能力を超えて、不思議な神の力で、豊かに成長させて下さいます。小さなからし種をも、とても大きな樹として下さる神様に信頼して歩みましょう!
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