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聖霊降臨節第5主日礼拝 説教 「命は素晴らしい」
日本キリスト教団茅ケ崎堤伝道所
2019年7月7日
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イザヤ書49章8~13節 ルカによる福音書8章26~39節
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「命は素晴らしい」 要約
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① イエス、ゲラサの狂人を癒す |
命がけの船旅から救われた一行は湖の向こう岸ゲラサに着きます。上陸するとゲラサ人で沢山の悪霊に取りつかれた男がイエスの所に来ます。悪霊の為に長い間、衣服を身に着けず、墓場を住まいとしていた彼は、ひどく荒れ狂う(狂人)生活をしていただけでなく、人間らしい生活が出来ない苦しみに自らも耐え続けていました。ゲラサの人々は、もはや誰も、彼には手が出せず、治る見込みがないと絶望していました。主の弟子たちも同様に感じたのでしょう。もしこの男を救えるとすれば、それは人間業でなく神の業だと。事実、神の子イエスがその聖さ故に、人の手を借りないで、悪霊を追放して下さいました。沢山の悪霊から解放された男は、あまりの感動に、自らも驚く言葉を発します。イエスのお供をしたい!主に同行したいと願ったのですが、主は男に家へ帰るよう促します。この出来事、神の福音を家族とゲラサの人々に伝えよと、彼に使命を与えました。彼はそれ応えて主が自分にして下さった事を悉く町中の人々に言い広め始めました。 |
②その名は「レギオン(=沢山、大勢)」 |
この男が自分の名を「レギオン」と答えたのは、自らの名を失った悲しい人の姿が見えます。名前は単に他人と区別するための便宜上の記号ではなく、人格の象徴であり、人間の尊厳と結びついたものです。「レギオン」はローマの軍団で、歩兵六千人とこれを護衛する三百ないし六百の騎兵で構成されていました。彼の名が「レギオン」であるという事は、彼がローマ軍による残虐行為を身に受け、それがために心にダメージを受けて狂人となったか、あるいはパレスチナ各地に駐在するローマ軍が強力なだけに内攻せざるを得ないで、その抑圧された心理が豚の集団死に象徴されるようなローマ軍の破滅の願望となったのかも分かりません。いずれにしても、この男は、大勢の悪霊に支配された狂人生活から、今や人間らしい尊厳ある生活へと180°変えられました。私たちも沢山の名前(日本人、男、クリスチャン、父、息子、…先生、等々)をつけられて、もてあましてはいないでしょうか。そのうちあなたの本当の自己を表わす名前はどれでしょうか。 |
③ 命は素晴らしい |
1979年のノーベル平和賞はマザーテレサした。マザーはカルカッタで孤児たちを拾い、ハンセン病の人たちをコロニーに連れて行き、一番大切な使命は、“死を待つ人の家”に連れて帰って、最期を看取った事です。「まだ世界中に一番悪い病気が残っています。それは、天然痘でもなければハンセン病でもない。結核でもなければガンでもない。自分は生きていても生きていなくても同じだと考える精神的孤独・精神的貧困と呼ばれる病気です」。マザーはこう言ったのです。カルカッタの街角に寝転がっている、寝転がっているだけでない、死にかかっている人たちを連れて帰り、髪を櫛笥ずり、うじの湧いた体を洗い清め、名前を聞いてやって、死ぬ迄の数時間、数週間をその人にとって初めての人間らしい交わりをして最期を看取ってあげる。すると、生まれる時も、望まれないで生まれ、生まれてからも、いつも邪魔者扱いされ、早く死ねばいいと思われていた人たちが、死ぬ前の数日間、もしかすると数時間を、“本当にあなたは生きてきて良かったですね”という暖かい手と目の中で、「ありがとう」と言って死んでいく。その姿に「命は素晴らしい」と神を讃美してやまない、と。神の愛に生きましょう!主と共に、聖霊の助けによって、「命は素晴らしい」生活を営みましょう!
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