主日礼拝 説教抄録  2019年度
    
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降誕節第1主日礼拝 説教 「二人の王

日本キリスト教団茅ケ崎堤伝道所
2019年12月29日

   ルカによる福音書2章1~7節


「二人の王」 要約
① ユダヤ人「イエス誕生」の事実
 ルカは、「ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った」(4節)と記して、イエス誕生の事実を述べます。生誕場所は「ユダヤのベツレヘム」、マリアの夫ヨセフが「ダビデ」の家筋である事を強調します。「ベツレヘム」の名の意味はパンの町です。が、ユダヤ人にとっては、彼らの大部分の者がバビロンに捕囚として連れて行かれ、<バビロン捕囚>と後に呼ばれるようになった時代を過ごしました。そして、やがて故郷に帰って来た時、どこに、どの家族が住むかを改めて定めた時に、ダビデ王の血筋の者たちは「ベツレヘム」を自分の町として定めました。その事からユダヤの人々を亡国の悲運から救い出し、真実の王国を再建する救い主が登場する時、「ダビデ家」の者が生きてきたベツレヘムからであるという信仰が生まれました。今や、ダビデの家筋のヨセフがベツレヘムに戻って来てイエスが誕生した。正にイエスこそ私たちの王だという信仰を意味したのです。
② ローマの皇帝「アウグストゥス」
 ルカは、「そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た」(1節)と、当時の皇帝の名前を出してイエス誕生の事実を示します。アウグストゥスはもとオクタヴィアヌスで、私たちが世界史を習う時、覚えなければならない名君の一人です。彼の時代は、かなり長い平和が続き<アウグストゥスの平和>と呼ばれました。ローマの人々は平和の時代を楽しみ、これは皇帝のおかげだと信じ、アウグストゥスを<救い主>と呼んだ事もあります。神と崇めた人々もあります。ある地方においては、皇帝アウグストゥスの誕生日が<福音>と呼ばれたそうです。ルカは、明らかに<誕生日を福音として祝われている皇帝アウグストゥス>のもとで生まれた「王イエス誕生」こそ、神の言葉によって<福音>として、人々に語り告げられたのだという事を強調したのです。皇帝アウグストゥスの平和が喜ばれ、その誕生日が福音として祝われている所で、殆ど誰にも祝われない王イエス誕生の記事を、確信をもって書き記したのです。
③ 二人の王
 この二人の王のうち、私たちに相応しい王は、皇帝アウグストゥスか、幼な子イエスか、どちらでしょうか。ローマの皇帝アウグストゥスは名君と言われました。しかし、ユダヤ人にとってローマ皇帝は明らかに敵です。こういう敵である権力者に首根っこを抑えられていると知ったのが「住民登録」でした。これによって<人頭税>が負わされました。その上、ヨセフには、ベツレヘムに本家があり、土地をもっていたため、今風に言えば<固定資産税>もかけられました。更には、皇帝を王とし、忠誠を尽くすという<誓い>までさせられたのでした。驚くべき事に、ヨセフは、これに従順に従っています。このヨセフの子としてイエスは生まれました。今は赤ん坊だから主張しないのでなく、成人なさった後も、イエスは皇帝を神としません。救い主としません。王としません。イエスの救い主としての主張は皇帝を倒す事でなく、皇帝に倒される事によって、ご自分が王である道を貫かれたのです。私たちは今、全世界にあって、王として、支配者として君臨している人々のあることを思います。そのような世界において、主イエスがまことの王として立っておられることを、私たちが深い確信を持って受け入れる事ができますように!

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日本キリスト教団 茅ケ崎堤伝道所
牧師 三原 信惠
 更新:2019.12.29 nk


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